靴

スニーカーブランドを独断と偏見で仕分けする

新しいスニーカーをおろした日は、なぜか歩くのが少しだけ楽しい。水たまりを大げさに避けて、駅の階段では足元ばかり見てしまう。

そんなスニーカーのブランドを、横を「スポーツ寄りか、ファッション寄りか」、縦を「ずっと定番か、いま旬か」にして、勝手に並べてみた。

勝手に地図

売上や流行を調べて並べたわけじゃなくて、街で見かけたときの印象で置いています。靴の履き心地や品質の良し悪しとは関係ありません。

ナイキ

スニーカーの話をするとき、最初に出てくる名前。そして、いちばん心と財布をすり減らす名前でもある。

新作の抽選に応募して、外れて、また応募して、また外れる。気づけば、靴を履いている時間より抽選の結果を待っている時間のほうが長い人がいる。発売日の朝だけは目覚ましより先に起きられる人もいる。

当たった一足は、箱から出されないまま棚に並ぶ。履くための靴だったはずが、ここまで来るともう靴というより、たぶん株。

アディダス

三本線は遠くからでもわかる。ジャージのせいで、ちょっと部屋着にも見える。

サンバが街で流行ったころ、電車の向かいの席に座った人の足元が、端から端までほぼサンバだったことがある気がする。古い名作を何度でも流行らせる力は本当にすごい。ただ、流行った瞬間にみんなが同じ足元になってしまうのも、このブランドの宿命なんだと思う。

ニューバランス

グレーのスニーカー。「履き心地がいいから」と言いながら、さりげなく型番の数字を口にする人がいる。

履き心地の話をしていたはずが、気づけば番号の話になっている。スーツにも合う、スウェットにも合う。なんにでも合いすぎて、何も考えずに選んだ人の靴に見えてしまう危うさがある。本人は誰よりも考えて選んでいるのに。

コンバース

もとはバスケットボールの靴。いまはバスケをしない人のほうが、圧倒的にたくさん履いている。

キャンバスが汚れてきたころがいちばんかっこいい、と言う人がいる。わざと汚したんじゃないかと疑いたくなるくらい、ちょうどいい汚れ方をしている人もいる。この靴は、足よりも先に気分で選ばれている気がする。

右上の角は、迷わず任せた。

ヴァンズ

南カリフォルニアのスケートボードの文化から生まれたブランド。

チェッカー柄のスリッポンを履いている人のうち、スケボーに乗れる人はたぶん少数派。でも誰も気にしていないし、それでいいんだと思う。夏の夕方、短パンにヴァンズで近所のコンビニまで。それ以上遠くへ連れていく靴ではないと、勝手に思っている。

プーマ

創業者は、アディダスの創業者と兄弟。ふたつのブランドがドイツの同じ町から別々に歩き出した、というのはよく知られた話。

それを知ってから、街でふたつのブランドの靴が並んでいると、なんだか親戚の集まりを見ている気分になる。三本線のほうが目立つ日もあれば、こっちが目立つ日もある。最近また街でよく見かけるようになったところを見ると、靴同士の張り合いはまだまだ続いているらしい。

アシックス

神戸生まれの、走る人のための靴。マラソン大会のスタート地点では、ほとんど制服みたいになっている。

それが最近、ファッションの人たちが急に「アシックスいいよね」と言い出した。走る人たちからすると、昔からずっといいんだけど、という顔をしていそう。真面目に走るために作られた靴が、真面目なままおしゃれ扱いされている。いちばん戸惑っているのは、たぶん靴本人。

オニツカタイガー

アシックスのルーツになったブランド。

黄色と黒のスニーカーを見ると、映画の中で刀を振り回すあの場面が浮かぶ。浮かんだ人の何割かは、たぶん一度は試着している。細身でぺたんとしたシルエットは上品なのに、値札を見ると、アシックスの親戚にしては思ったより強気で少し驚く。そのギャップごと好きになれる人向け。

リーボック

イギリス生まれ。エアロビクスのイメージのまま時間が止まっている人、けっこう多いと思う。

ポンプで空気を入れるスニーカーは、いま見ても少し未来っぽい。言い方を変えると、未来っぽいまま止まっている。派手に主張しないぶん、履いていると「お、わかってるね」と言われたい人の靴になりがち。実際に言われたことがあるかは知らない。

地図では真ん中より少し右下。どっちにも行けるし、どっちにも行かない。

オン

2010年にスイスで生まれた、この10個の中ではいちばんの新顔。

靴底に空洞の並んだ独特の形で、見ればすぐにわかる。最初はランナーのための靴だったはずが、いまは朝の通勤電車の足元にやたらといる。一度も走ったことのない足が、毎朝ランナーのための靴底に支えられて会社に向かっている。

いちばん下に置いたのは、勢いの印象。この勢いがいつまで続くかは、たぶん通勤電車が教えてくれる。

まとめ

並べてみると、スニーカーはもともと走るための道具だったのに、いまは走らない人のほうがずっとたくさん履いている。定番と旬の境目も、誰かの写真一枚であっさり動いてしまう。

結局、いちばん好きなスニーカーは、雨の日に履くのをためらう一足なんだよね。いちばん履かない靴がいちばん大事にされているのも、ちょっと変な話なんだけど。

※この記事は個人の独断と偏見です