髙島宗一郎・福岡市長の16年を、元福岡県民として書き残しておく
福岡市の髙島宗一郎市長が、11月の市長選に出ないと決めた。2026年8月23日、本人がSNSで表明している。発表 任期は12月6日まで。あと2か月もしないうちに、16年続いた髙島市長の福岡が終わる。
わたしは福岡を離れた元県民で、いまは福岡市民でも、福岡市の有権者でもない。それでもこのニュースを見たとき、どこかに書いておかないと気がすまなかった。地元のことは、離れてからのほうが気になる。そういうものらしい。
なので、書く。市の発表資料と新聞やニュースサイトの記事を読み直して、16年のあいだに福岡市で実際に起きたことを、確かめられた範囲で並べる。そのうえで、元県民のひいき目の感想を添える。
先に決めたことがひとつある。11月の市長選のことは書かない。次に誰が出るのか、誰を応援するのかには、このページでは一切触れない。これは選挙の話ではなく、ひとりの市長が16年かけて何をしたかの記録だ。
文中のラベルの意味
発表福岡市や、市長本人が発表・投稿したこと
報道新聞やニュースサイトが伝えていて、発表元では確かめられなかったこと
推測わたしの推測や感想
読み直した主な資料と記事
福岡市 市長室福岡市 IR資料福岡市 推計人口・国勢調査天神ビッグバン・博多コネクティッドの発表資料国家戦略特区のページTNCニュースダイヤモンド・オンライン東洋経済オンラインJ-CASTニュースNET-IB NEWS
どの資料に何が書いてあったかは、本文の中といちばん下の一覧に書いた。
先に、この16年を3行で
2010年、行政の経験がない36歳の元アナウンサーが福岡市長になった。そこから4回の選挙に勝ち続けた。
「スタートアップ都市」を宣言して国家戦略特区を取り、天神と博多駅のまわりのビルを建て替えさせ、福岡市の人口は146万人から167万人台まで増えた。
そして2026年、5回目の選挙に出られる状況で、自分から降りた。理由は「次の世代に襷を繋ぎたい」。
36歳の元アナウンサーが市長になった
髙島さんは1974年11月1日生まれ。1997年に九州朝日放送(KBC)に入社して、情報番組や環境番組のキャスターをしていた。発表 名字の「髙」は、はしごの形の「髙」が正式な表記で、ニュースでは「高島」と書かれることも多い。
2010年11月14日の福岡市長選で、当時36歳の髙島さんは現職に約6万5千票の差をつけて当選した。報道 市長に就任したのは、その年の12月。発表 本人はのちに、行政の経験も経営の経験もなかった、と振り返っている。報道
テレビの人が市長になる、と聞いて身構えた人は、たぶん少なくなかったと思う。しゃべりがうまいのは最初からわかっている。ずるいのは、そのしゃべりのうまさが、市長という仕事でちゃんと武器になってしまったことだ。推測
本人の話では、1期目は補助金や随意契約(入札をせずに相手を決める契約)の見直しに取り組み、2期目と3期目はまちづくりに力を入れたという。報道
屋台の街が「スタートアップ都市」と言い出した
2012年9月8日、福岡市は「スタートアップ都市ふくおか宣言」を出した。発表 スタートアップは、新しいやり方で急成長をめざす若い会社のこと。福岡といえば屋台と明太子と博多ラーメン、と思っていた元県民からすると、最初はちょっとくすぐったい言葉だった。
宣言だけで終わらなかったのが、この人の面倒くさいところで、いいところでもある。2014年5月、福岡市は国の「国家戦略特区」に選ばれた。名前は「グローバル創業・雇用創出特区」。発表 国家戦略特区は、国が地域を決めて、ふつうは全国一律の規制をそこだけゆるめる制度だ。
福岡市が特区で使えるようにしたものには、外国人が日本で起業するときの在留資格の条件をゆるめる「スタートアップビザ」や、できたばかりの会社の税金を軽くする「スタートアップ法人減税」がある。発表 市の資料によると、特区の中で設立5年未満のスタートアップは、法人市民税が最大5年間まるごと免除される。発表
2017年4月には、閉校した旧大名小学校の校舎に、起業する人たちの拠点「Fukuoka Growth Next」ができた。福岡市と民間の会社3社が一緒に運営する施設だ。発表 天神のすぐ隣、大名にあった小学校が、起業家のオフィスになった。この並びだけで、もう少しぐっとくる。
そして、福岡市の2024年度の開業率は4.9%で、政令市と東京23区をあわせた21の大都市の中で1位だと、市は発表している。発表 開業率は、すでにある事業所の数に対して、その年に新しくできた事業所がどれくらいあるかの割合。新しく始める人が多い街、ということになる。
空港が近すぎる街で、ビルを建て替えさせた
福岡の街の空が広いのには、理由がある。福岡空港が都心のすぐそばにあって、航空法で建物の高さに上限がかかっていたからだ。天神のビルが古くなっても、同じ高さでしか建て替えられない。それなら、建て替える理由も弱くなる。
2015年、福岡市はここに手をつけた。「天神ビッグバン」の始動だ。発表 天神交差点から半径約500メートル、約80ヘクタールのエリアで、国と協議して航空法の高さ制限をエリアごとに緩和してもらい、市独自の容積率(土地の広さに対して建てられる床の量)の緩和も組み合わせて、ビルの建て替えを後押しする。発表
市は、天神の近くに警固(けご)断層という活断層があることも、建て替えを急ぐ理由に挙げている。古いビルを、地震に強いビルに入れ替える。そのついでに、新しい空間と雇用と税収をつくる、という計画だ。発表
2019年1月4日には、同じ考え方を博多駅のまわりに広げた「博多コネクティッド」も始まった。こちらも博多駅から半径約500メートル、約80ヘクタール。発表 2023年3月27日には、地下鉄七隈線が天神南駅から博多駅まで延びて開業している。報道
しばらく天神を見ていない人が久しぶりに行くと、たぶん迷う。あったはずのビルがなくて、知らない名前のビルが建っている。工事中の囲いがどこかにあるのは、ここ10年の天神の通常営業みたいなものだ。推測
1週間で埋まった穴
2016年11月8日の早朝、博多駅前の大通りが大きく陥没した。地下鉄七隈線を延ばす工事をしていた場所だった。報道 市の工事で起きた事故なので、これは褒めるだけの話ではない。
それでも、ちょうど1週間後の11月15日の朝5時には、道路の通行が再開された。BBCやCNNなど海外のメディアも、穴が開いた直後と埋まった後の写真を並べて、その早さを伝えたという。報道
同じ年の4月には熊本地震があった。福岡市は、被災地が必要なものを把握して、仕分けの手間を減らし、避難所に届けるところまで、地震から9日後にはクラウド上の独自のしくみを作っていたと報じられている。報道 市長は、その記録をまとめた11枚のレポートを、2日間徹夜して書いたと話している。報道
派手な再開発より、こういう「起きてしまったことへの動きの早さ」のほうが、元県民の記憶には残っている気がする。推測
数字で見る16年
市長が替わったところで、街の数字がすぐ変わるわけではない。それでも、この16年の福岡市の人口は、ずっと増え続けた。
数字をそのまま書くと、2010年の国勢調査で1,463,743人、2015年で1,538,681人、2020年で1,612,392人。2026年5月1日の推計人口は1,677,632人で、1年前より11,415人増えている。発表 2015年から2020年の5年間の増え方は、人数でも率でも20の政令市の中で1位だった。発表
本人へのインタビュー記事では、任期中に人口が20万人以上増え、市税収入は1.6倍、市政への信頼度は80%を超えた、と紹介されている。報道 選挙のたびに、それまでの最多得票を更新してきたとも書かれている。報道
人口が増えたのを、市長ひとりの手柄にするのはさすがにひいきが過ぎる。九州のあちこちから若い人が福岡に出てくる流れは、もともとあった。ただ、その流れを止めずに、むしろ太くした16年だった、とは言っていいと思う。推測
16年をめくってみる
つまみを左から右へ動かすと、髙島市長の16年のできごとが順番に出てくる。このページで確かめられたことだけを入れた。
2010年11月
36歳で初当選福岡市長選で、元アナウンサーの髙島さんが現職に約6万5千票の差をつけて当選した。
就任から:就任の直前
「就任から」は2010年12月を起点にした、ざっくりした年数。
勝てるのに、やめる
ここからが、いちばん書いておきたかったところだ。
2026年8月23日、髙島さんはSNSで、11月の市長選に出ないことを表明した。「次の世代に襷を繋ぎたい」という言葉で。発表
その直後のインタビューで、本人はこう説明している。市長は予算と人事を一人で握る。だから物事を早く進められるけれど、その権限をひとりがずっと持ち続けるのは健全ではない。責任感は、いつのまにか権力への執着に変わりうる。「勝てるから続ける」のは自分への甘えで、政治家として誠実ではない。報道
16年、選挙に勝ち続けた人が言うから、この言葉は重い。追われたわけでも、行き詰まったわけでもなく、自分で決めて降りる。そういうやめ方をする政治家を、わたしはあまり見たことがない。
正直、ここがいちばんかっこよかった。
ひいき目だということは、わかっている
16年も市長をやれば、賛成の声ばかりではない。ビルが建って人が増えれば、家賃や混雑の話も出る。特区も再開発も、どこにどれだけお金と力を使うかの選択で、選ばれなかった側から見える景色は、たぶん違う。
このページに書いたのは、離れたところから福岡を見ていた元県民のひいき目だ。評価は、実際にその街で暮らしてきた人がそれぞれ決めればいい。推測
最後に
36歳でテレビの画面から市長室に移った人が、51歳で、勝ち続けてきた選挙を自分から降りると決めた。そのあいだに、天神のビルは建て替わり、廃校の小学校には起業家が集まり、博多駅前の穴は1週間で埋まった。
12月6日で任期は終わる。その先のことは、まだ本人も語っていない。福岡の16年分の変わり方を、元県民のひとりとして、ここに書き残しておく。
おつかれさまでした。
読み直した資料と記事の一覧
2026年10月17日までに公開されていたものを読んだ。数字は福岡市の発表資料を優先した。
- 福岡市:市長のオフィス(プロフィール)
- TNCニュース:福岡市の高島市長が5選不出馬へ(2026年8月24日)
- ダイヤモンド・オンライン:不出馬の理由【高島宗一郎・福岡市長インタビュー(1)】
- NET-IB NEWS:2010年福岡市長選の結果
- 福岡市:スタートアップ都市ふくおか宣言10周年の発表資料(PDF)
- 福岡市:国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」
- 福岡市ほか:Fukuoka Growth Nextを開設します(2017年2月24日、PDF)
- 福岡市財政局:福岡市IR資料(2026年4月、PDF)
- 福岡市:天神ビッグバン
- 福岡市:天神ビッグバンの関連資料・プレスリリース
- 福岡市:『博多コネクティッド』始動(2019年1月4日、PDF)
- NET-IB NEWS:ついに博多駅まで延伸開業 地下鉄七隈線のこれまでとこれから
- J-CASTニュース:BBCもCNNも称賛「博多陥没」復旧の速さ
- 東洋経済オンライン:熊本地震での福岡市の支援物資のしくみ
- 福岡市:平成22年国勢調査 結果概要(PDF)
- 福岡市:平成27年国勢調査 結果概要(PDF)
- 福岡市:令和2年国勢調査 結果概要(PDF)
- 福岡市:推計人口(2026年5月1日現在、PDF)
更新履歴:2026年10月17日 公開
※この記事は2026年10月17日時点の福岡市の公表資料と報道をもとに、福岡を離れた元県民の個人がまとめたものです。特定の候補者や政党を支持・応援するものではありません。「推測」と書いたところはわたしの感想です。