カフェ

コーヒーチェーンを独断と偏見で仕分けする

駅前で少し時間が空いたとき、どの看板に吸い込まれるかで、その日の自分の余裕がだいたいわかる。三百円台で済ませたい日もあれば、パンケーキが焼けるのを待てる日もある。

そこで、横を「お手ごろか、ちょい贅沢か」、縦を「映えるか、落ち着くか」にして、コーヒーチェーン10店を勝手に並べてみた。

勝手に地図

メニューの値段を調べて並べたわけじゃなくて、店に入ったときの財布と気分の印象で置いています。コーヒーの味の良し悪しとは関係ありません。

スターバックス

日本の1号店は1996年の銀座。そこから気づけば、どこの駅前にもあるお店になった。

それでも新作のフラペチーノが出るたびに、カップを窓際に置いて写真を撮る人がちゃんといる。毎日の場所なのに、季節ごとにちょっとしたイベントがある。それがこのお店のずるいところだと思う。

注文のカスタマイズを呪文みたいに唱えられる人を見ると、なんだか常連の貫禄を感じる。

新作が出るたびに名前が長くなっていって、注文の途中で一回息継ぎが要る。

ドトール

1980年に原宿で1号店を開いたお店。

ジャーマンドッグとブレンドで、さっと十五分。ここは時間をつぶす場所というより、時間を整える場所な気がする。新聞を広げている人と、資料を最後にもう一回見直している人が、同じ並びの席で静かに共存している。

地図では左の端に置いた。お手ごろって、それだけで立派な個性なんだよね。

ただ、席と席の間が近いので、隣の人の電話の内容にやたら詳しくなって店を出ることになる。

タリーズ

スタバと並べて語られがちだけど、店に入ると空気が少しだけゆっくりしている。

ソファ席が空いていたら、その日はちょっと当たり。ハニーミルクラテみたいな甘いメニューを頼んで、本を読み進めている人、たぶんけっこういる。映えを狙うより、自分の機嫌を取りに行くお店という印象。

スタバと間違えて入っても、たぶん誰も困らない。それが強みでもあり、ちょっとした悩みでもありそう。

コメダ珈琲店

名古屋生まれの喫茶店で、ここだけは地図の下の端を譲れなかった。

シロノワールを頼むと、思っていたより大きいのが運ばれてくる。あの瞬間の、ちょっと笑ってしまう感じ。ふかふかの椅子に座ったら最後、気づけば二時間くらい経っていて、コーヒーのおかわりを考え始めている。

落ち着くという言葉を、店の形にするとたぶんこうなる。

メニューの写真より実物のほうが大きいことでよく話題になる。頼みすぎて後悔するところまでが、たぶんコメダ。

星乃珈琲店

スフレパンケーキを待つ時間まで含めてメニューになっているお店。

焼き上がるまでのあいだ、窓の外を眺めながら話していると、休日の午後がちゃんと休日の顔をしてくる。チェーン店なのに、どこか昔ながらの喫茶店に来た気分になれるのがいい。

ただ、焼き上がりを待つあいだに話題が尽きると、その時間はけっこう長い。

サンマルクカフェ

チョコクロの店。それ以上の説明がいらないくらい、焼きたての匂いが看板代わりになっている。

トレーにチョコクロを二個のせるか一個にするかで迷う人、きっと全国にいる。お手ごろなのに、ちょっと甘いものを食べた満足感がしっかり残る。映える側に置いたのは、あの断面が地味にかわいいから。

ただ、チョコクロを食べたあとの指先と、ノートパソコンのキーボードの相性は最悪。

エクセルシオール カフェ

ドトールと同じグループのお店。

ドトールよりほんの少しだけ背筋を伸ばした感じで、打ち合わせ前に立ち寄るのにちょうどいい。目立つほうではないけど、駅前でここを見つけると、なぜかほっとする人もいると思う。地図の真ん中あたりがよく似合う。

ドトールの兄弟なのに、ドトールより少しだけ気取っている。その少しの差にお金を払うかどうかは、その日の自分しだい。

上島珈琲店

黒糖ミルク珈琲の印象がとにかく強い。

木のカウンターと、少し暗めの照明。ネルドリップで淹れるコーヒーを出すお店で、チェーンなのに急かされない空気がある。ひとりで来て、何もしないで座っているのがいちばん似合う場所かもしれない。

もっとも、黒糖ミルク珈琲を頼んだ時点で、ネルドリップのことはだいたい忘れている。

ブルーボトルコーヒー

アメリカのオークランド生まれで、日本の1号店は2015年の清澄白河。開店したときの行列は、ちょっとしたニュースになっていた気がする。

白い壁に青いボトルのマーク。カップを片手に店の前で写真を撮りたくなる気持ちは、とてもよくわかる。一杯を待つ時間も含めて、コーヒーを「体験」として出してくるお店。財布には少しだけ気合いがいる。

一杯を待っているあいだに、ドトールならもう飲み終わっていそう。

猿田彦珈琲

2011年に恵比寿の小さなお店から始まったコーヒー屋さん。

名前のインパクトが強くて、一度聞いたら忘れない。豆の話をちゃんとしてくれそうな雰囲気がありつつ、店の空気は意外とやわらかい。コーヒーにちょっと詳しくなりたい人が、最初の一歩を踏み出すのにちょうどいい気がする。知らんけど。

名前だけ聞いた人は、たぶんコーヒー屋さんだとは思わない。

まとめ

並べてみてわかったのは、コーヒーチェーンを選ぶとき、みんな案外コーヒーの味では選んでいないということ。座りたいのか、急いでいるのか、写真を撮りたいのか。その日の自分の都合で、入る看板が変わる。

ドトールで十五分の日も、コメダで二時間の日も、どっちもちゃんと必要なんだと思う。

※この記事は個人の独断と偏見です